家族で迎える葬儀や法事は、ふだんの集まりとはまったく意味が違う時間だと思います。
悲しみや緊張の中で、どう振る舞えばいいのか。服装はどこまで整えるべきなのか。迷われる方も多いのではないでしょうか。
「喪服はどの程度のものを用意すればいい?」「子どもの服装はどうしたらいい?」「家族で統一した方がいい?」
こうした不安にお応えしながら、この記事では、
- 葬儀・法事を家族で衣装を着て過ごす良さ
- 家族でどう過ごせば安心して当日を迎えられるか
を、和のマナーと衣装の視点からお話ししていきます。
着物や礼装のコーディネートに長く関わってきた立場として、実際のお客様とのやり取りや経験も交えながらお伝えしますので、これから準備を進める方の参考になればうれしいです。
和の心で寄り添う視点から見た「葬儀・法事」
私は京都の町家で育ち、幼いころから祖母に茶道や着付け、和裁を教わってきました。
日常の中に「人を迎える」「別れを見送る」ための所作や装いが溶け込んでいたように思います。
学生時代には日本文化と比較文化を学び、海外からの留学生に着物文化を説明する機会も多くありました。
その中で、「衣装はその場への敬意や心の在り方を映すものだ」と強く感じるようになり、今はフォーマルな場にふさわしい色柄の提案や、大切な一日に向けての心の準備のお手伝いをしています。
葬儀や法事の装いについてご相談をいただく際、単に「マナーとしてこうしてください」と伝えるのではなく、
- なぜそうするのか
- その装いが自分自身をどう支えてくれるのか
までお話しするようにしています。
今回は、その一部をできるだけわかりやすく整理してお伝えしていきます。
葬儀・法事で「家族の衣装」を揃える意味とは?
故人や親族への敬意を姿で表す
葬儀や法事の場で、家族の衣装がきちんと整っていると、それだけで空気が引き締まるように感じます。
黒を基調とした喪服や礼服で統一された姿は、言葉にしなくても「丁寧にお見送りしたい」という気持ちが伝わりやすいと思います。
インタビューの中でも、
「お別れの日こそ、きちんとした身なりでご挨拶をすることが、故人への礼儀なのだと教わってきました。衣装を整えることは、決して派手に着飾ることではなく、心を整える一つの所作だと感じています。」
という言葉がありました。
私は、この「派手さ」ではなく「礼節としての装い」という感覚こそ、家族で衣装を揃える良さだと考えています。
家族全体の心が落ち着く「スイッチ」になる
葬儀の準備期間は、手続きや連絡に追われて心の余裕がなくなりがちです。
そんな中で、家族で喪服や礼服を準備し、前日までに袖を通してみる時間は、「いよいよ明日お別れをするのだ」という心の準備につながると感じます。
衣装がバラバラで、「あの人の服はどうしよう」「これで大丈夫だろうか」と直前までバタバタしていると、当日も気持ちが落ち着きにくくなります。
逆に、家族全員分の衣装が整っていると、それだけで不安が一つ減り、儀式そのものに気持ちを向けられるようになります。
写真や記憶に残る「家族の姿」が美しく整う
最近は葬儀社や会場によっては、控えめに記録写真を残す場合もあります。
また、1周忌や3回忌などの法事では、集合写真を撮るご家庭も多いです。
そのとき、家族の衣装にある程度の統一感があると、写真を見返したときの印象が落ち着いていて、「あのとき、ちゃんと見送れてよかったね」と振り返りやすくなると感じます。
時間がたてばたつほど、その一枚の写真が心の支えになることも多いので、衣装をそろえる意味は意外と大きいと思います。
葬儀・法事の服装マナー(家族全員対応)
ここからは、実際の服装マナーについて、家族全員を対象に整理していきます。
大人(男性・女性)の基本マナー
葬儀の場では、一般的に以下のような装いが基本とされています。
- 黒を基調とした正喪服または準喪服
- 男性は黒のスーツ・黒のネクタイ・白シャツ
- 女性は黒無地のワンピースやスーツ、露出を抑えたデザイン
- 靴やバッグも光沢を抑えた黒でまとめる
アクセサリーは、結婚指輪以外は控えるか、つける場合は小さなパールのみ、といった目安がよく使われます。
柄物や光沢の強い素材は避け、全体的に「目立たない」「静かな印象」を意識すると選びやすいと思います。
法事の場合は、回忌が進むにつれて少しずつトーンを和らげていくケースもありますが、迷ったときは「やや控えめ寄り」にしておくと安心です。
子どもの服装マナー
お子さまの服装については、「絶対に喪服でなければならない」というわけではありません。
ただ、まわりの大人との調和を考えると、次のようなポイントを意識すると良いと感じます。
- 黒・紺・グレーなど、落ち着いた色味を選ぶ
- ロゴやキャラクターが大きく入った服は避ける
- 靴や靴下も白か黒、紺などシンプルなものにする
インタビューでは、
「無理に完璧な喪服を揃えなくても大丈夫です。ただ、色味や柄を少し落ち着かせてあげるだけで、ぐっと『きちんとした印象』になります。」
という言葉が印象的でした。
成長の早い時期なので、買うべきか迷う方も多いですが、「その場で浮かない」「動きやすい」ことを一番に考えると、ご家庭に合った答えが見つかりやすいと思います。
高齢の家族の服装マナー
ご高齢のご家族の場合は、まずは体調や動きやすさを優先していただきたいと感じます。
- 洋装・和装どちらでも問題ない
- 椅子から立ち上がりやすい、締め付けの少ないデザイン
- 足元はすべりにくい靴を選ぶ
和装の場合は喪服や色無地などが選ばれますが、ご本人の負担が大きいと感じるときは、無理をせず洋装の黒系フォーマルで整える方が、全体としては良い場合もあります。
大切なのは、「無理のない範囲で、その場を大切にしていることが伝わる装い」だと思います。
葬儀・法事の家族の過ごし方|心構えと当日の流れ
当日の流れの中で意識しておきたいこと
葬儀や法事の当日は、家族もなかなか落ち着いていられません。
だからこそ、事前に「基本の行動」をイメージしておくと安心です。
- 受付や開式時間より少し早めに到着する
- 会場に入ったら、私語を控え、案内に従って行動する
- 焼香や読経の最中は、立ち座りの動作を静かに行う
- 携帯電話は電源オフかマナーモードにし、操作は控える
インタビューでは、
「ご家族で一つ決めておいていただきたいのは、『誰が子どもを見守るか』といった役割分担です。特に小さなお子さまは静かな場に緊張してしまうこともありますので、“いつでも外に出られる大人”が一人いるだけでも安心感が違うと思います。」
というアドバイスもありました。
前もって役割を決めておくことで、当日のバタバタを少し減らすことができると感じます。
子どもと一緒に過ごす場合の工夫
お子さまが一緒の場合は、服装だけでなく「心の準備」も大切です。
- 出発前に、「今日は静かに過ごす日」であることを簡単に説明する
- どうしても落ち着かないときは、無理に叱らず、そっと外に連れ出す
- 事前に、退室しても良い場所や休憩スペースを確認しておく
「子どもが騒いでしまったらどうしよう」と心配される方は多いですが、無理に完璧を目指す必要はないと思います。
ご家族でフォローし合える体制を作っておくことで、少し気持ちが楽になるはずです。
故人・親族への配慮として避けたい行動
葬儀や法事の場では、服装だけでなく、次のような点にも注意しておくと安心です。
- 廊下や控室での大きな笑い声や雑談
- 目立つポーズでの写真撮影や、頻繁なスマートフォン撮影
- 強い香水や、きらびやかなアクセサリー
写真撮影については、会場や喪主の意向によって考え方が異なります。
迷ったときは、事前に「撮ってもよい場面があるか」を確認するとトラブルを避けやすいと思います。
家族分の衣装を整えるときの準備と段取り
まずは必要な衣装を書き出して整理する
家族分の衣装を用意するときは、いきなり買い物に出るよりも、まず紙に書き出して整理することをおすすめしています。
- 参列する人数と続柄
- すでに持っている喪服・礼服・小物
- 足りないアイテム(靴、バッグ、ネクタイ、数珠など)
この「見える化」をしておくだけで、「実は一式そろっている人」「小物だけ買えばよい人」が分かり、無駄な出費や慌てた買い足しを防ぎやすくなります。
手持ちの服で対応する場合の工夫
急な訃報などで、「新しく用意する時間がない」ということもあります。
その場合でも、次の工夫で印象を落ち着かせることができます。
- 手持ちの黒・紺・グレーの中から、もっとも落ち着いたものを選ぶ
- 派手な柄や装飾のあるものは避けるか、上からシンプルなカーディガンやジャケットを重ねる
- ロゴが目立つ場合は、上着で隠す
- 寒暖差対策には、地味な色味のストールやコートを使う
「今あるものを組み合わせて、できる限り場にふさわしい形に整える」ことも、立派な心づかいだと思います。
急ぎの場合の選択肢として、オンラインレンタルを活用する
「手持ちの服ではどうしても難しい」「サイズが合うものがない」というときには、オンラインの衣装レンタルを活用する方法もあります。
- 家族分の喪服や礼服をまとめて手配できる
- 子ども用や高齢の方向けなど、サイズ展開が広い
- 使用後はクリーニング不要で、そのまま返却できるサービスも多い
インタビューでは、
「最近は、家族全員分の衣装をインターネットでまとめて手配される方も増えています。とくに、お子さま用や遠方から集まるごきょうだいの分を一度に揃えられるので、忙しい時期の負担が軽くなると感じます。」
という声もありました。
急な葬儀や法事で時間が限られているとき、また買うか迷うアイテムが多いときなどは、こうしたサービスを上手に取り入れるのも一つの方法だと思います。
喪服・礼服・男性礼装など、用途ごとにまとまったカテゴリーページから選べるサイトも多いので、家族分を整理しながら探してみるとよいと思います。
法事のタイミングごとの衣装選びのポイント
葬儀から少し時間がたち、1周忌・3回忌と法事が続く中で、「服装はどこまであらたまるべきか」と迷う方もいらっしゃいます。
一般的には、
- 葬儀・告別式:黒一色の喪服が基本
- 1周忌・3回忌:まだ黒を基調とした礼服が多い
- それ以降の年忌:ややトーンを和らげたダークカラーの礼服も増えてくる
という流れが一つの目安になります。
和装の場合は、葬儀では喪服、法事では落ち着いた色無地や控えめな訪問着が選ばれることが多いです。
ただし、地域の慣習や菩提寺の雰囲気によっても違いがありますので、迷ったときは一度親族やお寺に確認されると安心だと思います。
家族で衣装を整えて葬儀・法事に向き合うことの意味
ここまで、葬儀・法事の服装マナーや家族での過ごし方、衣装を整える具体的な方法についてお話ししてきました。
- 家族で衣装を揃えることは、故人や親族への敬意を形にすること
- 準備が整っていると、家族自身の心が落ち着き、当日の負担が軽くなること
- 写真や記憶に残る「家族の姿」が、後から心の支えになること
こうした点を考えると、「衣装を整えること」は決して表面的なことではなく、心を整える大切な準備の一つだと感じています。
インタビューの最後に、こんな言葉がありました。
「葬儀や法事は、どうしても悲しみの中で迎える時間ですが、ご家族が衣装をそろえて並ばれているお姿は、とても静かで美しいと感じます。『ちゃんと見送ってあげられたね』と、あとから少しでも心が軽くなるように。そのお手伝いができればうれしいと思っています。」
完璧である必要はありません。
それでも、「できる範囲で整えよう」と家族で心を寄せ合う時間は、きっと故人にも伝わるのではないかと思います。
これから葬儀や法事の準備をされる方が、少しでも不安を減らし、家族で穏やかにその時間を迎えられますように。
衣装選びや過ごし方に迷ったときは、今回の内容を一つの道しるべとして活用していただければうれしいです。
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